企業のIT資産を正確に把握し、効率的かつ安全に活用するためにはインベントリ管理が欠かせません。PCやサーバー、ソフトウェアなどの情報を常に最新の状態で管理できなければ、セキュリティリスクや無駄なコストの発生につながります。特に複数拠点やテレワーク環境では、資産の所在や利用状況をリアルタイムで把握することが重要です。

今回は、インベントリ管理の基本的な意味から、その重要性、実践方法、そして運用時の注意点までわかりやすく解説します。

インベントリ管理とは

インベントリ管理とは、企業の各種資産情報を一元的に把握・整理する手法です。

特に情報システムの分野では、PCやサーバー、ネットワーク機器、プリンター、さらにはソフトウェアまで、あらゆるIT関連資産をまとめた「台帳」や「目録」を指します。

これらの資産を正確かつ最新の状態で管理することは、トラブルの未然防止、セキュリティ強化、ソフトウェアライセンスの適正利用など、企業運営において重要な役割を果たします。また、業務効率化やコスト削減にも欠かせません。

加えて、内部統制や監査対応の観点からも、その必要性はますます高まっています。

インベントリ管理の対象となる情報

インベントリ管理は、単に機器名や台数を記録するだけではありません。

ハードウェアであればメーカーや型番、導入日、設置場所、利用者といった基本情報に加え、利用履歴や障害発生の有無などの運用記録も含まれます。

ソフトウェアについては、ライセンス数や有効期限、インストール状況、バージョン、アップデート履歴などが重要な管理項目です。

企業におけるインベントリ管理の重要性

企業におけるインベントリ管理は、業務の透明性や資産の有効活用を促進する上で欠かせない取り組みです。

ここでは、インベントリ管理が企業にもたらす主な3つの重要性について解説します。

セキュリティ強化

インベントリ管理を通して、更新が適用されていないOSやソフトウェアを把握できます。

古いバージョンが見つかった場合には、迅速に更新を行うことで既知の脆弱性からシステムを守ることが可能です。

また、機器情報に設置場所や利用者を紐づけて管理することで、利用者不明の機器が放置されるリスクや、紛失による情報漏えいの危険性を低減できます。

特に近年は、テレワークの普及やモバイル端末の活用が進む中で、資産の所在と利用状況をリアルタイムに把握する重要性が一段と高まっています。

サイバー攻撃や内部不正の抑止に直結し、組織全体のセキュリティレベル向上に役立つでしょう。

コスト削減

インベントリ管理によって、利用実態のないクラウドサービスや未活用のサブスクリプション契約、不要なソフトウェアを特定することが可能です。

また、機器の稼働率を正確に把握できることで、予備機の適正な台数も見積もりやすくなります。

その結果、無駄な支出を防ぎ、予算を本当に必要な領域へ再配分しやすくなります。

コンプライアンスや内部統制の強化

インベントリ管理は、コンプライアンス違反や内部統制の不備を防ぐ上でも欠かせない要素です。

例えば、ソフトウェアライセンスの使い回しや契約外での利用は、利用規約違反となり、組織全体の責任が問われるリスクを伴います。

管理を徹底することで、こうした不正利用を未然に防止でき、自社のIT資産の利用状況を常に正確に把握しやすくなります。

さらに、機器やソフトウェアの利用データは、社内外の監査における客観的な証拠資料としても有効です。

正確な記録が整備されていれば、監査対応もスムーズに進めることができ、企業の説明責任を果たす上でも役立ちます。

インベントリ管理の方法

インベントリ管理には、大きく分けて「手動による管理」と「オートメーションによる管理」の2つの方法があります。企業の規模や運用体制、予算などによって適した方法は異なります。

ここでは、それぞれの特徴や向いているケースについて解説します。

手動によるインベントリ管理

手動で行うインベントリ管理の方法としては、Excelやスプレッドシートなどを用いて、担当者が資産情報を直接入力・更新していく形式があります。

ただし、正確性を維持するためには定期的な更新作業が不可欠であり、担当者の作業負荷が高くなりがちなため、可能であれば他の方法を検討しましょう。

また、人為的な入力ミスや更新漏れが発生しやすい点も大きな課題です。さらに、複数の担当者で共同管理を行う際には、データの整合性やバージョン管理にも十分な注意が求められます。

オートメーションを利用したインベントリ管理

オートメーションによるインベントリ管理は、専用のツールを導入し、IT資産の情報を自動で収集・更新する仕組みです。

中規模以上の企業や、複数の拠点で資産を管理している場合には、特に高い効果を発揮します。

こうしたツールを活用することで、ネットワーク上のPCやサーバー、インストールされているソフトウェアなどを自動的に検知し、一元的に管理することが可能になります。

人手を介さない分、作業の正確性と効率性が大幅に向上します。

一方で、導入コストや運用の複雑さを考慮すると、小規模企業では費用対効果を慎重に検討する必要があります。企業規模や管理対象の資産数に応じた適切な手法の選択が重要です。

インベントリ管理における注意点・対策

インベントリ管理は、企業のIT資産を正確に把握し、効率的に運用するために欠かせません。しかし、適切な管理を続けるには、いくつかの注意点を意識し、対策を講じる必要があります。

ここでは、特に重要な2つのポイントについて解説します。

インベントリ情報の定期的な更新

IT資産に関する情報は日々変化しており、特にソフトウェアの利用状況やアップデートの適用状態などは、常に把握しておくことが求められます。

そのため、インベントリ情報は定期的に取得・更新し、常に最新の状態を維持することが不可欠です。

とはいえ、手動での更新作業は担当者の負担が大きく、入力ミスや更新漏れのリスクも避けられません。

こうした課題を解決するためにも、専用のインベントリ管理ツールを導入し、自動的に情報を収集・反映できる仕組みを構築しましょう。情報の正確性と運用効率を大きく向上させることが可能です。

セキュリティとコンプライアンスの確保

インベントリ情報には、社内の機器構成や利用状況などの重要な経営情報が含まれるため、外部への流出は大きなリスクとなります。

ツールを選定する際には、データ保護やアクセス制御機能が充実しているかを確認することが重要です。

運用段階でも、利用者ごとに適切なアクセス権限を設定し、不要な閲覧や改ざんを防ぐ体制を整える必要があります。こうした対策を講じることで、情報漏えいの防止とコンプライアンスの維持が可能になります。

まとめ

インベントリ管理は、企業のIT資産を正確に把握し、安全かつ効率的に運用するための重要な取り組みです。適切に行うことで、セキュリティの強化、無駄なコストの削減、コンプライアンスや内部統制の維持に大きく寄与します。

管理方法には手動とオートメーションがあり、自社の規模や体制に合わせた選択が求められます。また、情報の定期更新やセキュリティ対策を怠らないことが、長期的な信頼性確保のためには重要です。

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