企業におけるPC情報漏洩対策の重要性は、年々高まっています。リモートワークの普及や高度化するサイバー攻撃により、企業の機密情報は常に危険にさらされている状況です。今回は、IT部門やセキュリティ担当者向けに、簡単に実施できる基本対策から専門知識を要する高度な対策まで、有効なPC情報漏洩対策を紹介します。
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目次
【簡単】PCの情報漏洩対策4選
まずは、専門知識がなくても比較的容易に実施できる、PCの情報漏洩対策を4つ紹介します。
OSやソフトウェアのアップデート
社内PCのOSやソフトウェアを常に最新の状態に保つことが、情報漏洩対策の基本です。
アップデートには既知の脆弱性を修正するセキュリティパッチが含まれており、これを怠ると攻撃者に侵入される可能性が高まります。
特にMicrosoft Office、Adobe製品など広く使われているソフトウェアは攻撃者のターゲットになりやすいため、優先的にアップデートしましょう。
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ログイン情報の適切な設定・管理
不正アクセスを防ぐためには、推測されにくいパスワードを設定し、他人の目につかない場所に管理することが基本です。
パスワードの決め方やログイン情報の管理方法などを周知徹底し、従業員全体のセキュリティ意識を向上させましょう。
そのほか、ログイン情報の管理を強化するには、パスワード管理ツールの導入もひとつの手です。
アクセス権の管理
従業員のアクセス権を管理し、業務上必要な情報にのみアクセスできるようにしましょう。特に機密情報のアクセス権は厳重な管理が必要です。
アクセス管理には下記のような原則があります。
・1人1IDの原則
・最小権限の原則
これは、1人の従業員に対して、個人の立場に応じた最小の権限を付与するという考えです。事前にアクセス要件(従業員の職務権限に応じたアクセス権の範囲)を定義した上で、適切な権限を付与しましょう。
また、アクセス権を持つ従業員が退職した際には速やかに無効化する手続きも重要です。
秘密保持契約の締結
情報漏洩のリスクは、相手の故意・過失に関わらず常に存在します。
このリスクに対する効果的な抑止力として、秘密保持契約書(NDA)の作成があります。内部情報にアクセスできる立場の従業員のほか、取引先や外部委託先とも締結することが重要です。
契約書には、秘密情報の定義や退職後の秘密保持義務、違反時の賠償責任などを明記しましょう。
【やや簡単】PCの情報漏洩対策5選
ある程度の知識が必要となる、情報漏洩の対策を5つ紹介します。
取引先に対する情報厳守の依頼
取引先にも適切な情報管理を要請することが重要です。
秘密保持契約の締結を取引開始時に実施するだけでなく、情報漏洩時の対応フローと責任範囲を明確化しておきましょう。
また、重要情報を共有する場合は、取引先のセキュリティ体制を事前に監査し、必要に応じて改善を求めることも効果的です。
従業員への社内教育
情報漏洩の多くは従業員のヒューマンエラーに起因します。セキュリティリテラシー向上のための教育は最も費用対効果の高い対策のひとつです。
効果的な教育内容としては下記があります。
・パスワード管理の重要性と適切な方法
・SNSでの情報発信における注意点
教育は一度限りではなく、定期的に実施し、理解度テストを行うことで効果を高めることができます。
情報機器の持ち込み・持ち出し制限
私物デバイスや記憶媒体の社内利用、および社内デバイスの持ち出しは大きなリスク要因です。
下記の対策で適切に管理しましょう。
・USB等の外部記憶媒体の使用制限または禁止
・社外持ち出し機器の全ディスク暗号化の義務付け
特にUSBメモリなどの小型記憶媒体は紛失リスクが高いため、社内ネットワーク上のセキュアなストレージサービスへの移行を推進しましょう。
高い視認性のもとでの情報管理
不正持ち出しの抑止と早期発見のため、文書やデータを適切に管理するための具体策を実施しましょう。
例えば、下記の方法があります。
・プリントアウト時のユーザー認証と印刷ログの記録
・機密文書の識別マーキングとナンバリング
・定期的な棚卸しによる情報資産の現状把握
閲覧や操作履歴の記録・管理
誰がいつどのデータにアクセスしたかを把握することで、不正行為の抑止と迅速な対応が可能になります。
これには、下記の対策があげられます。
・ログ監視ツールの導入
・ログ管理システムによるセキュリティインシデントの早期発見
【難しい】PCの情報漏洩対策4選
高度な知識を要するPC情報漏洩対策を4つ紹介します。これらの対策は技術的専門性が必要ですが、現代のサイバー脅威に対する強固な防御線です。
社内リソースだけでは実装が難しい場合は、セキュリティ専門業者への依頼も検討すると良いでしょう。
多層防衛の実施
単一の防御策では対処できない高度なサイバー攻撃から情報を守るため、入口・内部・出口の各レイヤーに防御策を講じる多層防衛が必須です。
▼入口対策(脅威の侵入を未然に防ぐ策)の例
・IDS(不正侵入検知システム)
・IPS(不正侵入防止システム)
▼内部対策(脅威の侵入に備える策)の例
・EDR(デバイスの不審な動きを検知するシステム)
▼出口対策(情報漏洩の被害を抑える策)の例
・サンドボックス
・プロキシサーバー
復元できない方法での情報破棄
廃棄済み情報からの漏洩リスクを排除するため、国際規格に準拠した方法で確実にデータを破壊することが重要です。
特に重要情報を含むストレージ媒体は、NIST SP800-88やIEEE2883-2022などの国際規格に準拠した方法で処理することが推奨されます。
データ処理の具体的な方法については、下記の記事をご覧ください。
「PC処分で安全にデータを消去する方法!注意点も解説」
ユーザー認証の強化
単なるパスワードによるアクセス制御から、より堅牢な認証システムへの移行を推進しましょう。
具体的な施策としては、下記があげられます。
・コンテキストベース認証による不審ログインの自動ブロック
・シングルサインオン(SSO)と多要素認証の組み合わせ
特に管理者権限を持つアカウントには、より厳格な認証プロセスを適用し、定期的なセキュリティ監査を実施することをお勧めします。
テレワーク用端末やネットワークの安全性の担保
リモートワーク環境は新たなセキュリティ境界となり、特別な対策が必要です。
社内ネットワークと同等のセキュリティレベルを確保するための施策を実装しましょう。
具体的には、下記のような対策が有効です。
・MDMの導入
・検疫ネットワークシステムの導入
PCの紛失・盗難時にすぐやるべき対処
企業PCの紛失・盗難が発生した場合、情報漏洩を最小限に抑えるために迅速な初動対応が不可欠です。下記の4つの対処を実施することをおすすめします。
・上長およびシステム管理部門への即時報告
紛失・盗難の状況(日時、場所、端末情報など)を詳細に伝えてください。
・「デバイスを検索」機能の活用
Microsoft、Apple、Googleなどが提供するデバイス追跡サービスで、紛失したPCの位置情報の特定やリモートロックを試みましょう。
・該当PCに関連するすべてのアカウントから強制ログアウトを実施
Microsoft 365/Google Workspaceの管理コンソールからアカウントのリセット、VPNアクセスの無効化、社内システムのパスワード変更などを行いましょう。
・警察への届け出
盗難の場合は被害届、紛失の場合は遺失物届を提出しましょう。
まとめ
PCの情報漏洩対策は、日々進化するサイバー脅威に対抗するために欠かせません。基本的な対策から高度な対策まで段階的に実施することで、企業の重要情報を守ることができます。
また、PC紛失・盗難時の迅速な対応手順を把握しておくことも重要です。さらに、PCを廃棄する際も情報漏洩リスクが存在することを忘れてはなりません。信頼性の高い方法で完全にデータを消去し、漏洩の可能性を排除しましょう。