PCのキッティングは、新しいPCを業務で使用できる状態にするために、OSの設定やソフトウェアのインストール、セキュリティ設定などを行う初期セットアップ作業のことです。しかし、この作業は設定ミスや互換性の問題、時間の制約などによりトラブルが発生しやすく、事前の準備と適切な対策が欠かせません。

今回は、PCキッティングの基本から効率化のポイント、外部委託の判断基準まで、情報システム担当者が知っておくべき知識を解説します。

PCの「キッティング」とは?

PCのキッティングとは、新規導入したPCや既存のPCを、業務で利用できる状態に整える設定作業です。

具体的には、OSのインストールやセットアップ、業務に必要なアプリケーションのインストール、ネットワーク設定、セキュリティ対策ソフトの導入などが含まれます。

企業の規模やシステム環境によって作業内容は異なりますが、一般的に10種類以上の工程が必要です。

なお、似た言葉に「初期設定(セットアップ)」がありますが、作業範囲が異なります。初期設定はPCを初めて使用する際の言語設定やパスワード設定などを指しますが、キッティングではこの作業を含めたPC利用までの一連の準備を行います。

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PCのキッティングの流れ

PCキッティングは順序立てて行うことで効率的に進められます。

基本的な流れは以下の通りです。

1.開封と付属品確認
新しいPCの梱包を開け、本体・電源ケーブル・LANケーブル・キーボード・マウス・モニターなどの付属品に過不足がないか確認します。

2.周辺機器の接続
キーボード、マウス、モニターなどの周辺機器をPC本体に接続します。ドッキングステーションを使用する場合は、この段階で設置しておくと効率的です。

3.起動確認
PCの電源を入れ、正常に起動するかを確認します。不良品を早期に発見することで、納品元への返品・交換対応がスムーズになります。

4.OSセットアップ
OSのバージョン確認を行い、必要に応じてアップデートやセットアップを実施します。企業の標準環境に合わせたOSの設定を行いましょう。

5.ネットワーク設定
社内ネットワークへの接続設定を行います。Wi-Fi設定、VPN接続、プロキシ設定など、社内システムにアクセスするための環境を整えます。

6.アプリケーションインストール
業務で使用するアプリケーションのインストールと初期設定を行います。オフィスソフトや社内システム用クライアントソフトなど、部署ごとに必要なソフトウェアを導入します。

7.外部機器の設定
プリンタやスキャナなどの外部機器との接続設定を行います。共有プリンタの設定は多くの場合必須となります。

8.初期パスワード設定
ユーザーアカウントの作成と初期パスワードを設定します。社内のパスワードポリシーに従って設定を行いましょう。

9.セキュリティ対策
セキュリティソフトやエンドポイントセキュリティツールのインストールと設定を行い、情報漏洩対策を講じます。

10.動作確認
全体の動作確認を行います。重要なアプリケーション、ネットワーク接続、セキュリティソフトの動作を入念にチェックしましょう。

11.資産管理登録
PCの管理番号付与や資産管理システムへの登録を行います。PCの所在把握や将来のリプレース計画のために重要な工程です。

12.配布・引き渡し
各部署や個人へPCを引き渡します。この際、簡単な操作マニュアルや問い合わせ先情報を添えると、導入後のサポート負担を軽減できます。

PCのキッティングでのよくあるトラブルと対策

大量のPCをキッティングする際にはさまざまなトラブルが発生する可能性があります。事前に対策を講じて、スムーズな導入作業を実現しましょう。

ここでは主な4つのトラブルと効果的な対策を解説します。

担当者への膨大な負担

PC1台のキッティング作業は手動で行うと2~3時間かかることがあります。

例えば10台のPCをキッティングする場合、20~30時間を要し、2営業日以上の作業時間が必要になります。通常業務と並行して行う場合、担当者への負担は極めて大きくなります。

【効果的な対策】

・余裕のあるスケジュール設定を行う
特にクローニング(マスターPCを作成して各PCに複製する方法)を採用する場合は、マスターPC作成に1~2週間程度の時間を見込んでおく必要があります。

・(社内で実施する場合)キッティング期間中の業務分担を見直す
特定の担当者に負担が集中しないよう配慮しましょう。

・(大規模な導入の場合)外部業者へのアウトソーシング
コスト面と作業品質を比較検討しましょう。

作業漏れ、手順ミスによる設定の不備

キッティング作業での設定漏れや手順ミスは、PC配布後のユーザーの業務開始を遅らせる原因となります。

特に複数拠点に展開している企業では、修正のための手戻りが発生すると数日間の業務遅延を招くことがあります。

【効果的な対策】

・詳細なキッティングマニュアルとチェックリストを作成する
担当者間で作業品質を均一化しましょう。

・確認作業を自動化するチェックツールを導入する
スクリプトを活用して設定状況を自動的に確認することで、人為的なミスを減らせます。

・複数人でのダブルチェック体制を構築する
特に重要な設定項目については必ず確認者を設けましょう。

クローニングにおけるライセンスの適用方法のミス

クローニングは大量のPCに同一環境を展開できる効率的な手法ですが、ライセンス管理に注意が必要です。

不適切なライセンス管理は法的問題やシステム障害につながります。

【効果的な対策】

・ボリュームライセンスの使用を徹底する
マスターPCに付属する1つのOEMライセンスを複数台に展開することはライセンス違反となります。また、ライセンスの上限を超えると認証が通らないため、ボリュームライセンスの購入が必要です。

・再イメージング権の有無や認証回数制限を事前に確認する
アプリケーションや契約内容によっては、再イメージング権の取得や、認証回数の上限引き上げの申請が必要になる場合があります。事前にベンダーへ確認しておくことをおすすめします。

・各アプリケーションのクローニング対応の可否を確認しておく
クローニングの際、システムIDやハードウェアIDが複製される場合があります。これにより動作に影響が出る可能性があるため、あらかじめ対応状況を確認しておくことが重要です。

セキュリティに関する設定の漏れ

セキュリティに関する設定が不十分である場合、ウイルス感染や情報漏洩といった深刻なリスクを招く可能性があります。

特に業務で使用する端末やネットワーク環境においては、些細な設定漏れが大きなトラブルにつながるおそれがあります。

【効果的な対策】

・セキュリティソフトの導入と適切な設定を行う
企業のセキュリティポリシーに沿った設定が必要です。

・多層的なセキュリティ対策を講じる
不要なサイトへのアクセス制限やデータの暗号化、ファイアウォールの設定などがあります。
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・セキュリティ設定専用のチェックリストを作成する
上記の対策が確実に実施されているかを確認する手段として、チェックリストの活用が有効です。

PCのキッティング代行を検討すべきケース

大量のPCをセットアップする場合、自社での対応は難しいケースがあります。

特に以下の状況では、キッティング代行サービスの活用を積極的に検討しましょう。

PC台数や端末が多い場合

多数のPCを短期間でセットアップする必要がある場合、社内リソースだけでは十分な対応が困難になることがあります。

作業人員と納期のバランスを確認し、社内対応が困難と判断される場合は、専門の代行サービスを活用することで、効率的かつ確実に導入作業を進めることができます。

作業場所や端末の保管場所が確保できない

キッティング作業には一定のスペースが必要です。特にデスクトップPCは筐体とモニターがかさばるため、十分な保管場所を確保する必要があります。

また、作業場所として会議室を長期間借りるなどの対応が必要な場合も、代行サービスを検討した方が社内業務への影響を最小限に抑えられます。

事業所が複数あるまたは事業所間の距離がある

複数の事業所にPCを配布する必要がある場合、輸送コストや出張旅費などの追加費用が発生します。また、IT担当者が各拠点を回ることで人員が分散し、通常業務に支障をきたす可能性もあります。

このような場合は、キッティング代行サービスを利用することで、物流面での効率化とコスト削減が期待できます。

まとめ

PCキッティングは、新規PCや既存PCを業務で使用できるよう準備する重要な作業です。OSのインストール、アプリケーション設定、ネットワーク構築など10種類以上の工程が含まれ、効率的に進めるには適切な手順と十分な準備が必要です。

特に大量PCの導入時には、担当者への負担増加、作業ミス、ライセンス管理、セキュリティ設定といったトラブルに注意が必要です。社内リソースだけでは対応が難しい場合は、キッティング代行サービスの活用も有効な選択肢となります。

PCの導入から保守までをトータルで考え、最適な方法を選択しましょう。

キッティング・保守運用を一括で任せるなら

PCのキッティングから導入後の保守運用まで一貫して外部委託することで、情報システム部門の業務負担を大幅に軽減できます。特に大量のPCを管理する企業にとって、専門業者への一括委託は効率的な選択肢となります。

日本システムケアでは、年間約50,000台のキッティング実績を誇り、設定ミス0台という確かな品質を実現しています。

人の手作業を完全に廃止した自動化システムにより、高品質・短納期・完全な状況把握を実現しており、1日50台から200台の大量生産も可能です。

さらにキッティングだけでなく、PC導入から廃棄まで一貫してサポートするLCMサービスも提供しており、お客様の負担を最小限に抑えます。

以下のような課題をお持ちの企業におすすめです。

・情報システム部門がなく、IT専門知識を有する人員が不足している
・情報システム部門が既存業務で手一杯で、キッティングや保守に十分なリソースを割けない
・複数拠点への大規模PC導入と、その後の継続的な保守管理が必要

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