重要な情報が記録されたPCのハードディスクを処分する際、悩みの種となるのが情報漏洩のリスクです。産廃業者に依頼して捨てたり、PCの初期化(フォーマット)を行ったりしても、データを完全に破棄することはできません。完全に消去されないまま処分したばかりに重要な情報が流出するケースもあるため、ハードディスクの処分方法は、熟慮の上、選択する必要があります。今回は、ハードディスクの処分方法とデータの消去方法、処分にあたってのNG行動について解説します。

ハードディスク(HDD)を処分する5つの方法

不要なハードディスクを廃棄する方法として、下記の5つの選択肢が考えられます。

自治体で処分する

市区町村のごみ回収を利用する場合、自治体によって違いはありますが、基本的に一辺の長さが30cm未満のハードディスクは燃えないごみや資源ごみ、30cmを超えると粗大ごみに該当します。

また、小型家電の回収ボックスを設置している自治体もあります。

ごみの分別方法や細かいルールは各自治体で異なるため、廃棄の前にお住まいの地域のガイドラインを確認してみましょう。

ただし、データが破棄されていないハードディスクをごみ回収に出せば、悪意のある第三者によって、個人情報を含むデータが流出するおそれもあるので要注意です。

トラブル防止の観点からも、各自の責任でデータを完全消去する作業は必要不可欠といえます。

メーカーや量販店に回収してもらう

PCメーカーは法令に基づき、事業用および家庭用の使用済みPCを回収する義務があります。そのため、メーカーを通じて内蔵のハードディスクを含むPCを廃棄できます。

また、一部の家電量販店でもPCの回収が行われています。

「PCリサイクルマーク」が貼られているPCは、メーカーだけでなく、一般社団法人パソコン3R推進協会でも回収されています。家庭用PCであれば無料ですが、事業用PCの処分には、回収再資源化料金が必要です。

この場合、データ消去については、原則としてユーザーの責任で行うことが推奨されています。

独力での対応が困難な場合は、一部のメーカーや量販店で提供されている有料のデータ消去代行サービスを利用することをおすすめします。

不用品回収業者に依頼

使用済みの物品を収集する不用品回収業者に、ハードディスクの処分を依頼する方法もあります。料金は発生しますが、廃棄の手間を軽減できる点がメリットです。

とはいえ、中には高額請求をしたり、不法投棄したりといったトラブルを起こす悪質な業者も存在します。

ハードディスク内のデータを完全に消去するだけでなく、信頼できる業者かを事前に確認することも必要です。

リサイクルショップに持ち込む

状態が良く、まだ正常に作動するハードディスクであれば、リサイクルショップに有料で買い取ってもらえるケースもあります。

内蔵HDDであっても、ケースを取り付けることで外付けHDDとして利用する使い道もあるなど、一定の需要が見込まれるからです。

ただし、転売されれば第三者の手に渡ることから、確実にデータを消去できる知識や技術が求められます。

フリマやネットオークションに出品

フリマサービスやネットオークションを利用して直接買い手を見つけて、現金化する道もあります。需要の高いハードディスクであれば、リサイクルショップより高値が付くかもしれません。

とはいえ、出品には手数料のほか、出品者とのやり取りや配送に伴う手間が発生します。さらに、データ消去を徹底しないと、第三者によって情報を抜き取られるおそれもあるので、注意が必要です。

【重要】処分前にハードディスク(HDD)をデータ消去する方法

どのような方法で処分するにしろ、情報漏洩のリスクを下げるには、ハードディスクのデータを消去する作業が避けられません。転売されるのであれば、データの完全消去は必須です。

次に、ハードディスクをデータ消去する方法を紹介します。

なお、PCを処分する際のデータ消去の方法については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

PC処分で安全にデータを消去する方法!注意点も解説

有料のデータ消去ソフトを使う

ハードディスクのデータを安全かつ完全に消去する方法のひとつに、国際的なデータ消去規格に準拠したソフトの利用があります。

数ある中でもおすすめは、一般社団法人日本ITAD協会が認定する「JITADデータ抹消ソフトウェア資格」を取得したデータ消去ソフトです。

JITADデータ抹消ソフトウェア資格とは、情報機器のリユース(再利用)およびリサイクル(再資源化)が適切に行われていることを示す認定資格です。下記では、その認定資格を取得した3つのデータ消去ソフトを紹介します。

Blancco Drive Eraser

世界の政府機関や研究機関で認証/承認/推奨されている株式会社ブランコ・ジャパンの上書き消去ソフトです。

NIST SP800-88や最新のIEEE2883-2022といった国際規格に準拠したデータ消去で、世界的に高い知名度と信頼性を得ています。

データ領域をゼロで上書きする「ゼロライト方式」と上書きを検証する工程で、データ消去の確実性を高める仕組みです。Blancco Drive Eraserについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:「法人向けのデータ消去ソフト「Blancco Drive Eraser」とは?PCのデータを確実に消去する仕組みを解説

DataSweeper3

再利用を目的に、ハードディスクのデータを完全消去できるアドバンスデザイン株式会社の上書き消去ソフトです。NIST SP800-88やNSAといった20以上の消去方式に対応しており、SSDのデータも消去できます。

消去証明書の発行機能のほか、消去結果を確認できるアフターチェック機能も搭載しています。

ターミネータ Business

NSAをはじめとする19以上の消去方式で、ハードディスクのデータを完全に抹消するAOSデータ株式会社の企業向け上書き消去ソフトです。用途に応じて、デバイスやライセンス数を選べる3モデルがラインナップされています。

ログの保存やアフターチェック、消去証明書の発行などの機能も有しています。

ハードディスク(HDD)を物理的に破壊する

ハードディスクを物理的に破壊し、使用できない状態にすることでデータの復元を防ぐ方法です。具体的には、ハードディスク専用の機械で粉砕したり、ハンマーで叩いたり、電動ドリルで穴を開けたりする方法などがあります。

物理的に破壊する方法のデメリットは、専用の機械なしでは完全な破壊が難しい点です。ハンマーや電動ドリルを使う方法では、データが記録されているプラッタまで完全に破壊できない可能性があります。

そのため、専用の機械や専門的な知識、技術がない場合はおすすめできません。独力での対応が難しい場合は、専門業者への依頼を検討しましょう。

ハードディスクを物理的に破壊する方法についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。

関連記事:「PCのハードディスクを破壊する方法とは?NG行為も紹介

専門業者に依頼する

専用の機械を使用する専門業者に依頼すれば、より確実にデータを完全消去できます。依頼時には、データ消去証明書の発行の可否やセキュリティ体制などの観点から、信頼できる業者を選ぶことが重要です。

日本システムケアでも、PC買取の際にデータ消去も承っております。NIST SP800-88をはじめとする国際ガイドラインに準拠したデータ消去方式を採用しているほか、物理破壊や磁気破砕消去にも対応が可能です。また、データ消去証明書も発行しております。

ご依頼があれば、指定の場所でデータ消去を行うオンサイト作業(現地作業)も実施いたします。

PCの廃棄・入れ替えに伴うデータ消去が必要な企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

>>日本システムケアのサービス詳細はこちら

ハードディスク(HDD)の処分でよくあるNG行動

下記のような行為は、データを完全消去できないばかりか、危険な場合もあるため、注意が必要です。

水に沈める

ハードディスクを水没させて破壊しようとする行為は、おすすめできません。内部にさびが発生したり、ごみが入り込んだりすることでデータは読み込めなくなるかもしれませんが、プラッタが破壊されない限り、データが復元される可能性は残ります。

電子レンジにかける

電子レンジの電磁波では、ハードディスクを破壊できません。確かに、磁気データ消去装置を使って強力な磁気をハードディスクに照射する磁気破壊は、データを完全に消去するために有効な方法です。

しかし、どのような磁気でもハードディスクを破壊できるわけではありません。電子レンジでは磁気破壊ができないばかりか、むしろ電子レンジの故障や火災の原因となるおそれもあります。

まとめ

不要なPCを処分する際に、最も避けなければならないのは情報漏洩です。情報の流出を防ぐ上で重要なのは、確実にデータを消去することです。「独力でのデータ消去には不安がある」「情報漏洩が心配」という場合は、専門業者への依頼をおすすめします。

セキュリティ体制の整った環境で、専用の機械を使用したデータの完全消去が実現できれば、情報漏洩のリスクを大幅に減らせます。専門業者に依頼する際は、知識やノウハウの有無、データ消去証明書の発行の可否などから信頼できる企業を選びましょう。