IT資産棚卸とは、企業が保有するハードウェア、ソフトウェア、ライセンスを体系的に整理し、現状を把握する重要な管理業務であり、セキュリティ強化やコスト最適化に直結します。しかし、適切な棚卸方法がわからず、管理不備によるライセンス違反リスクや無駄なコスト発生に悩んでいる企業もあるのではないでしょうか。

今回は、IT資産棚卸の基本概念から具体的な実施方法、成功させるためのポイントまで詳しく解説します。

IT資産棚卸とは

IT資産棚卸とは、企業が保有するハードウェアやソフトウェアなどのIT関連資産を整理し、現状を正確に把握する重要な管理業務です。

棚卸の対象となる資産は主に以下の3つのカテゴリに分類されます。

対象機器1|ハードウェア

ハードウェアは物理的に存在するIT機器全般を指し、棚卸の基本となる資産カテゴリです。

対象となる機器は、PCやサーバー、タブレット、スマートフォンといった主要機器から、プリンター、スキャナー、モニター、マウス、キーボードなどの周辺機器まで幅広く含まれます。

また、ネットワーク機器であるルーター、スイッチ、ファイアウォールも重要な棚卸対象です。

対象機器2|ソフトウェア

ソフトウェア資産は目に見えない無形資産であり、特に適切な管理が求められる分野です。

主な対象は、WindowsやmacOSなどのオペレーティングシステム(OS)、Microsoft OfficeやAdobe製品などのアプリケーションソフト、ウイルス対策ソフトなどのセキュリティソフトです。

対象機器3|ライセンス

ライセンス管理は法的コンプライアンスの観点から最も注意深く行うべき項目です。

具体的には、組織が契約により保有しているライセンス数と実際の利用状況との整合性、ライセンスの有効期限、利用者などが主な対象となります。

IT資産棚卸の目的

棚卸作業の意義と必要性を組織内で共有するためにも、以下の3つの目的を押さえておきましょう。

セキュリティの強化

IT資産棚卸は企業のサイバーセキュリティ体制を根本から強化する重要な施策です。

棚卸作業を通じて各機器やソフトウェアのアップデート状況を詳細に確認し、常に最新の状態を維持することで、脆弱性を狙ったサイバー攻撃のリスクを大幅に軽減できます。

特に、セキュリティパッチが適用されていない古いシステムや、サポート終了したソフトウェアの発見により、潜在的な脅威を事前に排除できます。

コンプライアンスの遵守

ライセンス管理の徹底は、企業の法的リスク回避と社会的信頼の維持に不可欠な要素です。

ソフトウェアライセンスの不正使用は企業の社会的信用を著しく失墜させ、場合によっては高額な損害賠償請求や法的制裁の対象となる可能性もあります。

IT資産棚卸によってライセンスの管理を徹底することで、無許可でのハードウェアやソフトウェアの使用を確実に防止し、コンプライアンス違反を起こさない強固な体制づくりを実現できます。

コストの最適化

IT資産棚卸は企業の経営効率化に直結するコスト削減の効果をもたらします。

使用されていないIT資産を正確に特定することで、必要に応じてリース契約の解約や機器の売却・廃棄を適切に実施でき、IT資産の保有コストを大幅に削減することが可能です。

同様に、ソフトウェアライセンスについても過剰契約分の解約や不足分の追加購入により、ライセンス費用の最適化が図れます。

IT資産棚卸の方法

適切な手順を踏むことで、正確かつ効率的な棚卸作業を進められます。

ここでは具体的な3つのステップをご紹介し、各段階での重要なポイントと作業内容について解説します。

Step1|正確な台帳の作成

まず既存データの確認を行い、各部署から最新の資産情報を漏れなく収集しましょう。

収集した資産は適切に分類し、管理番号を付与してデータを入力した上で、整合性を厳密に確認します。

この段階での不備は後のステップに大きな影響を与えるため、慎重かつ正確に進めることが重要です。

台帳に記載すべき主要項目は以下の通りです。

・資産の種類(PC、サーバー、ネットワーク機器など)
・管理番号
・品名
・OS
・設置場所
・取得価額
・取得年月日
・耐用年数
・利用実態
・契約期限(リース資産の場合)

Step2|ハードウェアとソフトウェアライセンスの紐づけ

各ソフトウェアがどのハードウェアに割り当てられているかを詳細に把握し、専用台帳として整備しましょう。

また、ハードウェア機器の導入や廃棄の際には必ず台帳メンテナンスを実施し、管理漏れを防止する体制を構築することが重要です。

ライセンス台帳の記載項目は以下の通りです。

・ライセンスの名称
・ライセンス数
・契約内容
・購入元
・取得年月日
・使用状況
・保守契約の有無

Step3|台帳と現物の一致を確認

台帳に記載されたIT資産と現物が正確に一致しているかを確認する照合作業を実施します。

資産管理番号を記載したシールを各機器に貼付し、目視による突合を行う方法が一般的な手法です。

さらに効率化を図る場合は、IT資産管理ツールの活用が有効です。各資産にバーコードやICタグを貼付し、専用機器で情報を読み取ることで、ツール上での自動照合が可能となり、人件費や作業時間のコストを大幅に削減できます。

【要チェック】IT資産棚卸のポイント

IT資産棚卸を、効率的かつ正確に行うためのポイントを紹介します。

多くの人員で一気に行う

できるだけ多くの人員を確保し、明確な役割分担のもとで一気に作業を完了させましょう。

長期間にわたる棚卸作業は通常業務に大きな負荷をかけるだけでなく、作業期間中の資産変動により精度低下を招くおそれがあります。

加えて、事前に詳細な作業計画を策定し、各担当者の責任範囲を明確化することで、スムーズな進行を確保できます。

台帳に正確に記入する

台帳記載時のルールを事前に策定し、全担当者がそのルールを徹底して遵守する体制を構築することが重要です。

特に大量のIT資産の購入・廃棄が発生する時期には、記入漏れやデータ入力ミスが頻発しやすくなるため、チェック体制の強化と複数人による確認作業を実施することが求められます。

専用ツールの導入も検討する

保有するIT資産数が増加すると、手作業による適切な管理・維持は現実的に難しくなります。

そのため、ハードウェアやソフトウェア情報の自動収集機能を搭載したツールも活用することをおすすめします。作業効率の大幅な向上とヒューマンエラーの抑制も見込めるでしょう。

まとめ

IT資産棚卸は、企業が保有するハードウェア、ソフトウェア、ライセンスを体系的に整理・把握する重要な管理業務です。正確な台帳作成から現物照合まで段階的に進めることが重要となります。

なお、IT資産棚卸も含めたPCの保守・運用なら日本システムケアにもご相談いただけます。専門的なサポートも検討しながら、持続可能な管理体制を構築していきましょう。

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