企業の情報資産を守るためのセキュリティ対策は、ビジネスを守る上で最重要課題です。日々巧妙化するサイバー攻撃や、内部からの情報漏洩リスクに対し、適切な対策を講じなければ企業の存続すら危ぶまれる事態に発展しかねません。

しかし「何から始めれば良いのか」「どのセキュリティソフトが適切か」と悩む情報システム担当者も多いのではないでしょうか。

今回は、法人PCに必要な基本対策から選ぶべきセキュリティソフト、見落としがちな注意点まで、実践的なセキュリティ対策を解説します。

法人PCで行うべき基本のセキュリティ対策

ここでは、情報システム担当者が押さえておくべき基本的なセキュリティ対策を解説します。社内PCの管理を任されている方は、まずこれらの対策から始めましょう。

なお、情報漏洩対策については以下の記事も参考になります。
法人PCですべき情報漏洩の対策を難易度別に紹介!紛失・盗難時の対処法も解説

セキュリティソフトの導入

法人PCを守る最も基本的な対策は、信頼性の高いセキュリティソフトの導入です。ウイルスやマルウェアの感染を防ぎ、社内の重要データを保護します。

Windows PCには標準で「Microsoft Defender」が搭載されていますが、高度化・巧妙化するサイバー攻撃に対しては機能が不十分な場合があります。

特に法人利用では、より強固な保護機能を備えた、有料の法人向けセキュリティソフトの導入が強く推奨されます。

OSやソフトウェアを常に最新に保つ

OSやソフトウェアには、定期的に「セキュリティアップデート」が提供されています。これらのアップデートは既知の脆弱性を修正するためのもので、適用しないと攻撃者に付け入る隙を与えてしまいます。

多くのソフトウェアには自動アップデート機能がありますが、業務への影響を考慮して計画的に実施するケースもあります。

アップデートの重要性を社内で周知し、できるだけ迅速な適用を心がけてください。

定期的なバックアップを実施する

重要なデータは定期的にバックアップすることで、万が一の事態に備えることができます。

バックアップの方法には、外付けHDDやクラウドストレージの利用などさまざまな選択肢がありますが、重要なのは定期的かつ確実に実施することです。

また、バックアップデータへのアクセス権限管理も忘れずに行いましょう。

パスワードの運用ルールを明確にする

簡単なパスワード(「123456」「password」など)や複数のサービスでの使い回しは、不正アクセスの原因となります。

パスワード漏洩は、大きな情報セキュリティリスクとなるため、適切な管理ルールが必要です。

効果的なパスワード管理には、以下のようなルールを明文化し、全社で共有することが重要です。

・IDやパスワードは異なるサービス間で使い回さない
・英大文字、英小文字、数字、記号を組み合わせた複雑なパスワードを設定する
・定期的にパスワードを変更する
・パスワード管理ツールの活用を検討する

USBメモリや外部デバイスの使用を制限する

USBメモリなどの外部デバイスは、便利な反面、セキュリティリスクも伴います。マルウェアに感染した外部デバイスを接続することで、社内ネットワークへの侵入経路となる可能性があります。

また、機密情報を保存した外部デバイスの紛失や盗難による情報漏洩リスクも深刻で、近年はこうした外部デバイスを介した攻撃が増加しています。

対策としては、業務上必要な場合のみ使用を許可する、暗号化機能付きの製品を使用する、外部デバイスの接続を監視・制限するソフトウェアを導入するなどが効果的です。

明確なルールを設け、全従業員に周知徹底しましょう。

法人PCを守る安全性の高いセキュリティソフト3選

ここでは、多くの企業で採用されている法人向けセキュリティソフト3選を紹介します。各ソフトの特徴を比較し、ニーズに合った製品選びの参考にしてください。

ESET(イーセット)

ESETは軽量で高いパフォーマンスを維持しながら、強力な保護機能を提供するセキュリティソフトです。

システムへの負荷が少なく、業務用PCの動作速度を落とさないという大きなメリットがあります。特に優れているのは誤検知の少なさで、日常業務の中断を最小限に抑えられます。

また、マルウェア対策、スパイウェア対策、フィッシング対策など幅広い脅威から保護し、リモートワーク環境にも対応しています。

管理者にとって使いやすい一元管理コンソールを備えており、複数端末のセキュリティ状況を効率的に監視できます。導入コストも比較的リーズナブルで、中小企業から大企業まで幅広く対応可能です。

Avast(アバスト)

Avastは高度な脅威検知能力を持ちながら、コストパフォーマンスに優れたセキュリティソフトです。

AIを活用した行動分析機能により、新種のマルウェアやゼロデイ攻撃などの未知の脅威にも効果的に対応します。

クラウドベースのセキュリティ管理プラットフォームを提供しており、リモートワークが増加した現代のビジネス環境に適しています。

ランサムウェア対策や機密情報の保護機能も充実しており、ビジネスデータを守る多層防御を実現しています。

導入・運用の手間が少なく、専任のIT担当者がいない中小企業でも管理しやすい設計です。

Norton(ノートン)

Nortonは長い歴史を持つセキュリティベンダーとして、信頼性の高い包括的な保護機能を提供しています。

マルウェア対策はもちろん、ファイアウォール、不正アクセス防止など、多角的なセキュリティ対策が1つのパッケージに統合されています。

特筆すべきは高度なエンドポイント保護機能で、各PCがネットワークの弱点となることを防ぎます。

また、オンラインバックアップ機能も備えており、万が一の際のデータ復旧対策も考慮されています。サポート体制も充実しており、セキュリティ対策に不安を感じる管理者でも安心して導入できます。

自社に合ったセキュリティソフトを選ぶ際のポイント

法人向けセキュリティソフトを導入する際は、単に人気や知名度だけで選ぶのではなく、自社の環境やニーズに適したものを選定しましょう。

押さえておくべき選定ポイントは以下の4つです。

・動作環境を確認する
古い機種や特殊なソフトウェアを使用している環境では、互換性の問題が生じる可能性があります。

・ライセンス期間を確認する
一般的には1年単位の更新が多いですが、複数年契約でコストメリットがある場合もあります。

・インストール可能な台数を確認する
社内の現在のPC台数だけでなく、将来的な増加も見込んで選定しましょう。

・導入後のサポート体制を確認する
ベンダーのサポート体制(対応時間、問い合わせ方法、日本語対応の有無など)を事前に確認しておきましょう。

法人PCのセキュリティ対策で見落としがちな注意点

情報セキュリティインシデント(※)や事故の多くは、技術的な脆弱性よりも「人間」が起点となって発生します。

セキュリティソフトの導入だけでは防ぎきれない、法人PC管理における重要な注意点を紹介します。

※情報セキュリティインシデント:企業や組織の情報セキュリティを脅かす可能性のある事件や事故のこと

権限設定のミス

アクセス権限の設定ミスは、情報漏洩や不正アクセスの大きな原因となります。

定期的に共有設定の棚卸しを行い、必要最小限の権限のみを付与する原則を徹底しましょう。

また、プロジェクト終了時や人事異動時には、アクセス権限の見直しも忘れずに行うことが重要です。

PC廃棄に伴うデータ消去作業の不備

PCを廃棄する際のデータ消去が不十分だと、重大な情報漏洩につながる可能性があります。

事前に専用のデータ上書き消去ソフトを使用するか、専門業者によるデータ消去サービスを利用することをお勧めします。

適切なデータ消去の方法について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
PC処分で安全にデータを消去する方法!注意点も解説

テレワーク化における独自のリスク

テレワークの普及により、オフィス外での業務が一般化していますが、それに伴う新たなセキュリティリスクへの対応が必要です。

例えば、PCやデバイス内のデータの暗号化、ディスプレイの覗き見防止フィルターの使用、公共Wi-Fiの使用禁止やVPN接続の義務化などが効果的です。

また、紙の資料や情報が記録されたUSBメモリなどの管理ルールも明確にしておきましょう。

従業員の教育不足

どれだけ高度なセキュリティ対策を講じても、最終的な安全性を左右するのは「人」です。実際に多くの情報漏洩や不正アクセスの原因は、従業員の誤操作や知識不足によるものです。

これらのリスクを低減するためには、全従業員を対象とした定期的なセキュリティ教育が欠かせません。

最新の脅威動向や攻撃手法の紹介、具体的な事例を用いた研修、フィッシングメール訓練などを実施し、セキュリティ意識の向上を図りましょう。

まとめ

法人PCのセキュリティ対策は、企業の情報資産を守るための必須課題です。基本対策としては、セキュリティソフト導入、OSの定期アップデート、バックアップの実施などが重要です。

また、技術的対策だけでなく、権限設定のミス、PC廃棄時のデータ消去の不備、テレワークにおける独自のリスク、従業員の教育不足といった運用面の課題にも目を向ける必要があります。

サイバー攻撃は日々進化していますが、適切な対策と継続的な改善で、大切な企業情報を守ることができます。