PCを処分する際は、データの取り扱いに注意が必要です。PCには財務情報、人事情報、顧客情報、技術情報などの重要なデータが含まれており、消去せずに処分してしまうと情報漏洩のリスクが高まります。近年では廃棄されたPCやHDDから企業の情報が流出する事例も相次いでいます。

今回は、データ消去の重要性を解説するとともに、安全にPCを処分するための具体的な方法を紹介します。

PC処分の際にデータ消去する重要性

PCには日々の業務や個人利用で蓄積された財務情報、人事情報、顧客情報、技術情報など、多岐にわたる重要データが保存されています。データを消去せずにPCを処分すると、第三者によって悪用されるおそれがあります。データの種類と流出時のリスクは下記の通りです。

情報の種類 具体例 流出時のリスク
財務情報 損益計算書、貸借対照表、勘定科目の内訳書など 競合他社による経営情報の悪用、取引先との信用喪失
人事情報 従業員の個人情報、採用応募者の情報、給与・賞与のデータなど 身元詐称や不正アクセス、内部告発、労務トラブルの誘発
顧客情報 顧客の氏名、会社名、連絡先(電話・メール)、購買履歴など 詐欺やスパム攻撃、信頼関係の損失、法的訴訟リスク
技術情報 開発情報、ノウハウ、研究成果、教育コンテンツなど 競合他社への技術流出、知的財産の侵害、事業戦略の崩壊

 

情報漏洩が発生した場合、個人情報保護法や不正競争防止法に基づく罰則を受けるだけでなく、顧客や取引先からの信頼を失うリスクもともないます。

近年、情報漏洩の事例が増加しています。例えば、廃棄処分されたHDDから銀行口座情報や顧客リストが流出し、不正に利用された事件がありました。また、フリーマーケットで販売された中古PCに企業のビジネス文書が残されていたという報告もあります。

データを消去したと思い込んでいても、実際には十分に消去できていなかったことが主な原因です。

通常の削除方法ではデータが復元可能な状態で残ることが多いため、データ消去の規格(IEEE2883-2022、NIST SP800-88など)に準拠した専用の消去ソフトや物理的な破壊が必要です。

PCのデータを消去する4つの方法

PCのデータを消去するには、主に4つの方法があります。

方法1|データ消去のソフトウェアを使う

データ消去の規格(IEEE2883-2022、NIST SP800-88など)に準拠した専用のソフトウェアを利用することで、PCのSSDやHDDに保存されたデータを安全に消去できます。保存領域に無意味な数字やランダムなデータを上書きすることで、データを消去する仕組みです。

PCを処分するときなど、確実にデータを消去したい場合は有料ソフトやPCメーカーの専用ツールがおすすめです。有料のソフトウェアは、より高度な消去アルゴリズムを採用しているだけでなく、問い合わせ対応やサポートが受けられるため、万一のトラブルにも備えることができます。

方法2|PCの回収業者に依頼する

PCの回収業者に依頼する方法が最も簡単で効率的です。専門業者がデータ消去から廃棄処理まで一括して対応してくれるため、手間を大幅に軽減できます。特に大量のPCを処分する必要がある場合や、社内でデータ消去を行う技術・設備や時間がない場合に適しています。

業者によって対応の品質が異なるため、信頼性を見極めることが重要です。データ消去の証明書の発行の有無や、過去の実績を確認しましょう。

方法3|Windows搭載の機能で消去する

Windows10以降のOSには標準でデータワイプ(消去)機能が備わっています。他人に譲渡する際やPCを売却する場合、データワイプすることで、データを安全に削除できます。操作手順は下記の通りです。

Windows10の場合

(1)「設定」を開きます。
(2)設定画面の検索バーに「回復」と入力し、表示される「回復」を選択します。
(3)「このPCを初期状態に戻す」欄の「開始する」をクリックします。
(4)再設定オプションの選択画面が表示されたら、「すべて削除する」を選びます。
(5)次に、データ削除の方法を選ぶ画面で「ファイルを削除してドライブのクリーニングを実行する」を選択します。
(6)その後、画面の指示に従って操作を完了します。

Windows11の場合

(1)Windowsマークをクリックします。
(2)「設定」をクリックします。
(3)「システム」 をクリックします。
(4)「回復」をクリックします。
(5)「PCをリセットする」をクリックします。
(6)「すべて削除する」をクリックします。
(7)「ローカル再インストール」をクリックします。
(8)「次へ」をクリックします。
(9)「リセット」をクリックします。

データワイプ機能は単にファイルを削除するだけでなく、削除後に無意味なデータを上書きするため、データの復旧が困難になります。

ただし、データ消去規格に準拠した方法ではない点に注意が必要です。

方法4|ハードディスクを物理的に破壊する

HDDやSSDをハンマーやドリルなどを使って物理的に破壊することで、データを完全に消去できます。HDDの場合、内部にある円盤(プラッタ)を細かく破壊する必要があります。プラッタは非常に頑丈であり、部分的な破損だけではデータが復旧される可能性が残るため、確実に粉々にすることが重要です。一方、SSDの場合は、データが保存されている複数のメモリチップをすべて破壊しなければなりません。

ただし、これらを自力で破壊することは推奨しません。破壊の過程で怪我をするリスクや、破片が飛散する危険性があるため、適切な工具や防護具が必要です。さらに、物理的に破壊しても、一部のデータが残ってしまう可能性を完全に排除することは難しいため、専門業者による破壊サービスを利用する方が安全で確実です。

なお、ハードディスクを破壊する方法や注意点については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
関連記事:「PCのハードディスクを破壊する方法とは?NG行為も紹介

方法5|磁気消去を行う

磁気消去は、強力な磁力を使ってHDDや磁気ストレージの内部データを完全に消去する方法です。一般的な磁石では不十分で、非常に強力な磁場を発生させる専用の「デガウザー」という装置が必要です。

しかし磁気消去は高額な専用装置が必要なほか、操作後もストレージの外見には変化がないため、「本当に消去できているのか」という不安が残ります。

そのため、企業や自治体などでは多くの場合、磁気消去を行った後にHDDやSSDを物理的に破壊する手順を取ることが決まりとして定められています。

PCのデータを消去する際の注意点

PCを処分する際には、データの漏洩を防ぐために次のような対応が必要です。

初期化だけでは完全にデータを消去できない

PCの初期化を行うと見た目はデータが削除されたようになりますが、ハードディスク内にはデータが残っているケースがあります。多くの復元ソフトでは、初期化後のストレージからデータを取り戻せるため、これだけでは情報漏洩のリスクを十分に防げません。

特に、顧客データや個人情報などの機密情報が含まれているPCを処分する場合、初期化だけに頼るのは危険です。データを完全に消去するには、上書き消去ソフトの利用や専門業者への委託など、より確実な方法を選択することが重要です。

必要なデータのバックアップをしておく

重要なデータがPC内にある場合、消去する前に必ずバックアップを取っておく必要があります。万が一、消去後に必要なデータがあった場合でも、事前にバックアップを取っていれば復旧が可能です。

下記は代表的なバックアップ方法です。

・データ移行ツール:専用ソフトウェアを使って、PCのファイルやデータを他のPCや外部ストレージに移す方法。
・クラウドストレージ:インターネットを通じてファイルをオンライン上のサーバーに保存する方法。

まとめ

PCの処分において、データの安全な消去は不可欠です。初期化だけでは不十分なため、上書き消去ソフトや物理破壊、磁気消去など、複数の方法を組み合わせて対処することが推奨されます。今回、解説した内容を参考に、PCのデータを適切に消去しましょう。

PCのデータ消去から処分まで依頼するなら「Re-Valueサービス」

企業が独自にデータを消去する場合、消去漏れなど後にトラブルが発生するケースが少なくありません。

PCの安全な処分を考えるなら、「Re-Valueサービス」をご検討ください。NIST SP800-88準拠方式(※1)やIEEE 2883-2022(※2)など、国際的なガイドラインに基づいた高水準のデータ消去を行っています。漏洩リスクを最小限に抑え、安全なPC処分を実現します。

また、PCを廃棄するのではなく、資産として当社に売却する仕組みを採用しています。そのため、通常の廃棄処理に必要なマニフェスト管理が不要となり、業務の負担を軽減できます。通常、PCを廃棄する場合は廃棄コストが発生しますが、Re-ValueサービスではPCの買取金額がプラスされるため、処分費用の大幅な削減が可能です。

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※1 NIST SP800-88準拠方式:アメリカの政府機関であるNISTが推奨する最新のデータ消去方式のこと。
※2 IEEE 2883-2022:NISTの後継に該当する最新規格のデータ消去方式のこと。